One's habitat Blog

ホームページ「One's habitat」の付属ブログ。何屋かと訊かれたらオカヤドカリの人です。無断転載ダメ。

オガサワラヤモリ クローンB 大東諸島

オガサワラヤモリ クローンB 大東諸島

Lepidodactylus lugubris "Clone-B"

オガサワラヤモリ大東

 オガサワラヤモリは単為生殖種ですが、クローンタイプによる遺伝的多様性を秘めた可愛いヤモリです。一般的に知られているのは日本の南西諸島で広く見られるクローンC or Aですが、その2タイプから外れた模様を持っているのがクローンBになります。上の写真のとおり、大きな黒点模様を持っているためダルメシアンのような格好良さがあります。言うまでもなくこのクローンBは見たいヤモリの一種でした。見たいと思いつつもなかなか見に行けていなかった理由。それは日本での分布が大東諸島に限られている(一部報告例あり)ためです。

南大東島

南大東島

 大東諸島沖縄本島から約360km東方の海洋島で、飛行機の便は少なく、フェリーも波で欠航しやすい絶妙に行きにくい島嶼です。しかも、大東諸島はオガサワラヤモリ以外の両生爬虫類が全て移入種で、虫や海の生き物にも興味を持っていないと更に遠征候補先から外れること必至でしょう。そんな大東諸島南大東島に2021年の秋頃に一人で赴き、オガサワラヤモリを探してきました。

 遠征記については、クリーパー93号南大東島フィールドレポートとして寄稿しております。ご興味のある方は是非購読してみてください。

幼体

 オガサワラヤモリ クローンBはずっと見たかったヤモリでしたので、1個体目を見つけた時は久しぶりに国産ヤモリでテンションかなり上がりましたよ。

太平洋西部の島々で観察したオガサワラヤモリをまとめているページは以下リンクからメインサイトへ。

www.ones-habitat.com

ケラマトカゲモドキ

ケラマトカゲモドキ

Goniurosaurus kuroiwae sengokui

ケラマトカゲモドキ

 慶良間諸島の一部(渡嘉敷島阿嘉島)に固有のクロイワトカゲモドキ亜種:ケラマトカゲモドキ。本亜種は赤眼とマッチしたオレンジの体色が特徴で、国産ゴニではケラマが一番好きという声も多い種です。航空券が高騰する連休に島へ行くなら、下手に飛行機を乗り継ぐよりチャチャっと本島から船で行ける島へ行った方が安くて混雑もなく楽しめるのではないかと思い、渡嘉敷島へ初上陸してきました。渡嘉敷島は生き物が見やすいと言われていたとおり、苦労することなくケラマトカゲモドキがポロポロと姿を現してくれました。

Goniurosaurus kuroiwae sengokui

 比較的オレンジ色の濃い個体。色味には個体差が大きいようで、ピンクに近い個体も普通に見られます。それと、渡嘉敷島の山中は蚊が多いのか、よく刺されているのを見かけました。蛇とかはその辺寄せ付けないでしょうが、ヤモリは硬い鱗で防御されていないので格好の餌食ですね。人からしたら小さな蚊も、ヤモリにはたまったもんじゃないですよね。

ケラマトカゲモドキ

 幼体は色味が濃いです。可愛い、というよりは小さな時から凛々しい格好良さ。抱卵したメス個体(1枚目の写真)も、ハッチして数週間という幼体も見られたので満足です。

 

English site is under link.↓

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ウンゼンルリクワガタ

ウンゼンルリクワガタ

Platycerus delicatulus unzendakensis

ウンゼンルリクワガタ

 ウンゼンルリクワガタは長崎県雲仙岳と長崎佐賀の多良岳に分布するルリクワガタ亜種で、九州西部の特産種です。寸詰まり傾向の形態、青みの強さ等から亜種に分類されていますが、分類するほどではないとの意見もあるらしいです。打って変わって雲仙岳多良岳でさえ分化しているとの意見もあるそうですが、ニワカ虫屋としては何もわかりません。本種は長崎に引っ越してから気にかけていた種で、コツを教えてもらって探してきました。

ウンゼンルリクワガタ 産卵マーク

ウンゼンルリクワガタ 産卵マーク

 ルリクワガタ類は産卵の際に特徴的なマークを材に遺します。それが写真の通り(・)です。これを生息地の生息標高である1000m程度の急斜面で倒木や立ち枯れを見て回り、材の表面を削る、といった採集方法です。こういうの初めてだったんで見つけるまでに2022年春先3週連続で週末に山へ通いました。初回は階段を降りれなくなるような筋肉痛に、2回目は尻筋が僅かに筋肉痛に、3回目は右腕が筋肉痛になっています。

ウンゼンルリクワガタ

 久しぶりにハードなフィールドでしたが、なかなか刺激的で楽しかったですね。長崎での良い思い出になりました。

One's habitat 制作のグッズ販売について

One's habitat -Marketing Division-

oneshabitat.theshop.jp

One's habitat制作のグッズ販売を開始いたします。販売については、上記リンクのBASEにて行なっておりますので是非ご覧になってください。隙間産業生き物屋として刺さる方には刺さる商品を用意しております。本記事では、今回販売する商品5点について紹介したいと思います。価格や素材等はBASEに記載しております。

 

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キャットゲッコー マウスパッド

1.キャットゲッコー マウスパッド

 マレー・ボルネオ・シルバーアイのキャットゲッコーがその特徴である妖艶な眼で見つめてくるマウスパッドです。キャットゲッコーは現在一般的に3タイプ知られており、それらの大きな特徴である眼の色がしっかりわかる高品質印刷。A5サイズですので、気持ち大きめなマウスパッドです。

 キャットゲッコー3タイプが手元に揃った時に、これらの眼を見比べられる何かがあればいいなと思い、これを作りました。マウスパッドは仕事中でも手元にあり、好きに眺められるというキャットゲッコー好きのデスクワーカーやPCを使う趣味の方にはたまらない一品になったと思います。

 

 

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日本のオカヤドカリ 合皮コースター

2.日本のオカヤドカリ 合皮コースター

 日本で見られるオカヤドカリ科全8種が円形に並ぶフェイクレザーコースターです。ゾエア幼生とメガロパ(グラウコトエ)幼生も載った豪華なラインナップ。コーヒーブレイクや晩酌等に南の島の鮮やかなオカヤドカリ達を添えませんか。時計周りにヤシガニ、ムラサキオカヤドカリ、オオトゲオカヤドカリコムラサキオカヤドカリ、ナキオカヤドカリ 、オオナキオカヤドカリオカヤドカリ、サキシマオカヤドカリオカヤドカリのゾエア幼生、ヤシガニのメガロパ幼生。

 自費出版本の「オカヤドカリ-Land Hermit Crab in Japn-」出版から早5年。販売開始から10日で売り切れてしまったため幻となってしまい今なお、また販売して欲しいという言葉をありがたいことに時折いただいております。なかなか本の再販は重い腰が上がらないので、日本で見られるオカヤドカリ類を網羅したグッズを代わりに作ろうと思いました。というわけで、ふとした休憩で使えるコースターにしました。

 

 

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都心のセミテネラル クリアファイル

3.都心のセミ テネラル クリアファイル

 夏の風物詩であるセミには、一晩のほんの短い時間にだけ魅せる姿があります。賑やかな成虫達が鎮まる夜、地面の穴から出てきた幼虫は木や壁を登り、羽化を始めます。幼虫の殻から抜け出て身体が固まるまでの僅かな時間に魅せる姿は淡く鮮やかで、時間を忘れるほど神秘的です。本クリアファイルは都心3区で見られるセミ6種のテネラル(羽化直後)をまとめた一品。(今回で1番の自信作)

 セミのテネラルは小さい頃から大好きで、この作品の構想は2018年に立てていました。2019年には写真も揃っていたのですが、流石に一品のみの販売はやり方が悪いと思って着手が遅れていました。なんやかんやと他に4品ほど揃えることができたので、満を辞して作成。白部分を透明にしてあるので、夜にライトで探すが如く白い紙を挟むと鮮やかに浮かび上がる仕様です。なかなか満足いく仕上がり。

 

 

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ムカデ クリーニングクロス

4.赤脚ヨロイオオムカデ クリーニングクロス

 ムカデ類の中でも飛び抜けて異質なヨロイオオムカデ。ヤスデを専食し、ヤスデに擬態する本種は目にかかる機会が極端に少なく、最高峰とも言われています。そんなヨロイオオムカデの赤脚個体をモデルにしたクリーニングクロスです。メガネやPC画面等、繊細な物にムカデを這わせて綺麗にしませんか。

5.マレーシアンジュエル クリーニングクロス

 ムカデ随一の美麗種であるマレーシアンジュエルのクリーニングクロスです。なかなか日常生活では使いにくいモデルではありますが、黒い身体から伸びる三原色は周りの人から彼らのイメージを覆すかも。

 貴重で人気なムカデをドカンと載せた一品。特に赤脚ヨロイオオムカデは何かしら形にしたかったので、この写真は今まで隠していました。今のところ私以外には取り扱えない代物ですので、この機会に是非。

 

 

一応サイトの方でもギャラリーとしてページを作ってあります。

www.ones-habitat.com

福江島のミナミヌマエビ

福家悠介・岩﨑朝生・笹塚諒・山本佑治,2021.五島列島福江島におけるミナミヌマエビの初記録.Cancer,30:63-71.

www.jstage.jst.go.jp

オープンアクセス

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福江島ミナミヌマエビ

 ミナミヌマエビ Neocaridina denticulataは西日本に分布する陸封型のヌマエビ類で、同属の外来種(外部形態での種判別は困難)が日本に定着したことで分類学的混乱を極めています。本論文は、長崎県五島列島福江島にてカワリヌマエビ属の一種を発見し、ミトコンドリアDNA分析によってミナミヌマエビと同定したものを初記録として報告した共著論文です。九州本土サンプルやイキシマカワリヌマエビ(この時のサンプル)も含めて分析を行い、イキシマカワリヌマエビは九州ミナミヌマエビの一地域集団と考えられること、九州におけるシナヌマエビの移入等について言及しています。カワリヌマエビ問題について深く述べられている第一著者の力作ですので、ぜひ読んでみてください。私は本集団発見のきっかけと、イキシマカワリヌマエビの標本を提供をしたことで共著者となっています。

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福江島内の本論文とは関係ない溜池

 福江島は水資源の豊富な島で、島内には無数の溜池と河川が存在しています。そんな島にミナミヌマエビがいないはずはないと仮説を立てていたのですが、最初の発見をしたのは一緒に遠征をしていた第二著者でした。私は仕事のため早期離脱をしており、採れたよという連絡が来たときは何で自分がいないときに…という気持ちと、やっぱり自分の仮説は正しかった(この時点では在来かどうか不明)という気持ちで、何と言うか取り敢えずまた行かなきゃなぁとぼんやり予定を描いていました。

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福江島のビーチ

 福江島の海は沖縄のように綺麗ですし、昆虫類はフクエアオカナブンやゴトウヒラタクワガタ等と面白いものがおり、結構気に入っています。

対馬のアカマダラ

アカマダラの轢死体摂食

Lycodon rufozonatus rufozonatus

アカマダラ

 2021年台風9号による大雨の中、対馬でヘビ探ししたところロードキルされたヌマガエルを摂食しているアカマダラに出会いました。この写真はレンズに水滴付くのがもう防げなくて写り込んでしまっているんですけど、横殴りの雨も上手く捉えられているので台風感出て逆に良いかなと思っています。

 アカマダラは中国や韓国等大陸に広く分布しており、日本では大陸色を濃く受けている対馬尖閣諸島でのみ見られます。つまり、対馬は南西諸島以外で本土8種以外のヘビを見ることができる貴重な島嶼です。対馬固有のツシママムシもいます(もちろん他にも対馬でしか見れない爬虫両生類がたくさんいます)し、本当に面白い島だと思います。話が逸れましたが、本種は飼育においても飼いやすく、大陸血統でモルフが作出されているのでそこそこ人気はありますね。ちなみに先島諸島に分布するサキシママダラはこのアカマダラの先島諸島亜種です。

アカマダラ捕食

 アカマダラの屍肉食については、2002年に報告が出ています。何もなければ書こうかと思いましたが、既に出ていますので。

 本個体を見つけた林道は雰囲気が何とも沖縄感がありましたし、赤いマダラヘビを林道流しで見つけるとまるでアカマタの様ですし不思議な感覚になりました。

九州本土のヤクヤモリ

九州本土のヤクヤモリ

Gekko yakuensis

ヤクヤモリ

 ヤクヤモリは屋久ヤモリであり、屋久島をタイプロカリティとする国産Gekkoの中でも最大級種です。九州本土の南部にも分布しており、宮崎県や鹿児島県でも見ることができます。

ヤクヤモリ

 しかし、九州南部はミナミヤモリが移入しておりややこしいことになっています。(書き途中)