しかし、2023年に再整理した論文が出たことでしっかりと独立したオカヤドカリ属種であることが認識され、オカヤドカリ界隈を沸かせたことは記憶に新しいです。なお、論文における標本の情報は、モルッカ諸島から採集されたメス2個体をシンタイプとし、それから100年越しにパプアニューギニアやニューブリテン島、シブヤン島から追加が得られたというもの。どの島も極めて行きにくいことに加えて、稀種であること、そしてオカヤドカリ C. cavipesとの見分けが高難易度であることから、そうそう現物を拝むことはできないオカヤドカリ属最難関種であることがわかります。
ただ、カケラばかりの希望が論文に書かれていました。「ある本に載っているグアムの個体が本種の特徴を有している。」標本の得られた島の位置や海流を踏まえると、グアムにいてもおかしくはありません。であれば、渡航難易度だけは下がります。しかし、問題の本質はそこではなく。。。グアムは筆者が何度も渡航してオカヤドカリ科を観察しているにも関わらず、これまでにオカヤドカリ C. cavipes(当時は隠蔽があるとは梅雨知らず)と認識した個体は1個体しか見たことがないほどの稀少さであり、見分けるとかいう以前にサンプルが出ないのです。
ところが、旅行という形で2025年9月に再度グアムへ赴くことになりました。折角だし、夜にちょろっとホテル裏の海岸林くらいは探そうとかなと言いつつ本格的な装備を用意しているのは性なのでしょうね。するとどうでしょう。その日は条件が良かったのか信じられない数のヤシガニが活動しているではないですか。至る所でヤシガニがガサガサしている中で、ふとポトスの葉の上にてカタツムリの貝が見えました。まさか、と近づくと脚が見える。グッと寄るとそれはよく南西諸島で見たオカヤドカリ C. cavipesとそっくりな幼体でした。