One's habitat Blog

ホームページ「One's habitat」の付属ブログ。何屋かと訊かれたらオカヤドカリの人です。無断転載ダメ。

南大東島のシロサンゴヤドカリ

 南大東島の塩屋には海水淡水化施設があり、汲み上げられた海水が常に排出されています。標高10mはある断崖に、この排水によって海水環境が形成されていました。流石にこの高度だとちょっとしたカニくらいしかいないだろうと思って覗いてみると、なんとシロサンゴヤドカリ Calcinus seuratiの集団が。

南大東島 塩屋

 シロサンゴヤドカリは奥地のタイドプールまで進出する傾向があるとは聞いていましたが、まさか断崖を乗り越えて楽園を作っているなんて思ってもみませんでした。

シロサンゴヤドカリ

 シロサンゴヤドカリの上陸を伴う内陸進出と海水淡水化施設によって形成された環境の生物相構築に触れた短報を出しています。興味があればぜひ。

シロサンゴヤドカリの上陸行動と海水淡水化施設によって形成された内陸海水環境への進出 - ニッチェ・ライフ (10)

シオマネキ Tubuca arcuata

シオマネキ

Tubuca arcuata

シオマネキ

 シオマネキ類は日本にて12種+α(偶産)が確認されており、そのほとんどが南西諸島に分布しています。そして本土でも認知度のあるのがこの総称と同一の標準和名を持つシオマネキTubuca arcuataです。日本でもトップクラスに有名な干潟がある有明海の代表生物であり、ムツゴロウやワラスボ等に並んで親しまれております。

 シオマネキ類はもともと全てUca属に分類されていましたが、分類が見直されております。日本に分布する種は4属に分けられ、シオマネキはTubucaに分類されます。Tubucaは大型になる分類群で、本種もシオマネキ類の中では圧巻のサイズと迫力を誇っています。

諫早湾の干潟とシオマネキ

 3年半の長崎生活の最期に、思い出したように探してきました(9月中旬)。かの有名な諫早湾エリアでちょっとした河口を覗いてみたところ、良いサイズの個体がワラワラと歩いています。岩というか石垣の上にもそこそこ出てくるようで、そういう個体に駆け寄れば汚れることもなく簡単に捕えることができました。有明海では塩辛にする食文化もあり、佐賀県では禁漁区が設定されています。

オガサワラチビクワガタ ブリード

オガサワラチビクワガタ

Figulus boninensis

オガサワラチビクワガタ

 オガサワラチビクワガタは①チビクワガタの最大級種で20mm近くになる、②ワインレッドの体色、③亜社会性、④小笠原諸島固有種、⑤肉食、というこの上ない魅力を持つクワガタです。2014年の小笠原諸島遠征では見ることができなかったので、どこかのタイミングで飼育でもしたいなと思っていました。ふと思い立って2022年2月にペア(父島・中央山産CB)を導入し、4年ぶりにクワガタブリードを開始。コバシャ中にクヌギ産卵木と無添加微粒子マットでセットを組みました。餌は適当にヤモリ用のイエコなりフタホシなりを縊って置いておいたら次の日には破片になっており、肉食ってこんな感じなんだなと。基本マットに潜っていて姿が見えないので途中で完全放置してしまっていたのですが、ヤバいヤバいと6月末に様子を見てみたところ親は消えていましたが幼虫が産まれていました。

オガサワラチビクワガタ幼虫

 幼虫を2匹ほど確認できたところで弄るのをやめてまた放置。途中ダニもキノコバエも湧いてしまいなんとなく諦めていたのですが、9月末に再度様子を見てみたところ普通に成長していたようで悪くないサイズの成虫が出ました。

オガサワラチビクワガタ ブリード

 オガチビは半年で成虫が見られるとありましたがそのとおりでした。クワガタブリードは年単位で待つので途中で待ち飽きてしまい、成虫になった頃には熱が冷めてしまうことが多かったのですが半年なら悪くないですね。幼虫もまだまだサイズがバラバラに控えており、通年で新成虫が楽しめそうで良い感じです。

タカラヤモリ

タカラヤモリ

Gekko shibatai

タカラヤモリ  Gekko shibatai

 タカラヤモリは吐噶喇列島宝島にのみ生息するヤモリで、その見に行きにくさは前述トカラハブの記事のとおりです。特徴は黄色い口先と、そこそこ複雑な背模様でしょうか。島内では個体数が多く、競合する他のヤモリもいないため至る所で見つかりました。行きにくいけど、行けば見れるの典型ですね。

タカラヤモリ  Gekko shibatai

 今回はアダンの実にくっついているのを何個体か観察できました。(毎回こういうオカヤドカリ探しをしていないと見れない爬虫類の貴重な場に遭遇できるのが強み。)熟れたアダンの実には昆虫も集まるので、待ち伏せをしているのか、アダンの果汁を舐めにきているのか。同行していたmtisさんは、捕獲した際に出したモノがオレンジ色っぽいので果汁を舐めてる可能性は充分にありますね、とのことでした。桑の実を摂食してるとの話もありますし、飼育下でもレパシーを食べるそうなんで、こういう果実から幅広く糖分を摂取しているのかもしれませんね。

トカラハブ

トカラハブ

Protobothrops tokarensis

トカラハブ  Protobothrops tokarensis

 トカラハブはトカラ列島南部の宝島、小宝島にのみ生息する日本北限のハブです。トカラ列島奄美大島の北に位置し、鹿児島本土または奄美大島の港からフェリーでしか上陸できません。このフェリーは悪天候による欠航率が高いうえに、鹿児島本土の港からは宝島まで片道13時間かかります。奄美大島からは近いのですが、奄美まで行ってフェリーが欠航して行けませんなんてことも往々にしてあります。計画が欠航で頓挫した時はせっかく用意した時間的にも金銭的にもダメージが大きいのは言うまでもなく、なかなか足が伸びないというのが多くの意見です。とはいえ、個人的には同じくらい行きにくい島嶼である小笠原諸島に比べると魅力的な爬虫類がいるので、まだトカラは遠征してる人がいるなという印象です。学生なら奄美大島と重ねて長期遠征をするという時間に物言わせた魅力的なプランもありますし。今回は九州住みという利点を活用して午前中は仕事をしつつ、出航が決まる当日に新幹線を予約して行ってきました。帰りは記録的短時間大雨に掴まり途中停泊して遅延しましたが、終電ダッシュで間に合いました。やはりリスキーな遠征です。

 トカラ列島は深い海峡(トカラ海峡)で区切られており、その境界線は生物地理学的には渡瀬線と呼ばれています。ここが本土の生物と琉球の生物の分布の境目となっており、宝島はギリ琉球側にあります。しかし、奄美群島とはまた一味違う生物が生息し、爬虫類で言えば有名なものにこのトカラハブがいます。本種は最大全長1m程度の小型種で、色彩の個体差が大きく白黒の2タイプに分けられてます。

トカラハブ

白トカラハブ(トカラハブ淡色型)

  白トカラハブ(トカラハブ淡色型)

 淡いクリーム色の個体。大体8割がこのタイプになります。夜に林道を歩いていたらぽとぽとと落ちていました。海浜植物群落にもいたので、オカヤドカリ類探しでも注意しなきゃいけないですね。

 

トカラハブ

黒トカラハブ(トカラハブ暗色型)

  黒トカラハブ(トカラハブ暗色型)

 昼間に海岸沿いの洞窟にアンキアラインを求めて入ったところ遭遇しました。昼間はこういうところで涼んでたりするんでしょう。黒い身体に輝くクサリヘビのこの鋭い眼。格好良すぎますこれ。

 

 滞在時間17時間とはいえ、無事2タイプ見れて良かったです。他にも中間型の茶色い個体とか、金色の個体とかいるらしいですが、そこまでは見れませんでしたね。本種は言うまでもなく有毒種です。強毒ではなく、分布もこの通りなため血清が作られておらず、咬まれたら対処療法で寝込むしかないです。あまり薮には入らない方が賢明ですね。洞窟に入った時は足元に白個体がいて、踏み場を間違えてたら危なかったなという場面もありました。村内も至る所に「吐噶喇ハブ🐍注意」のステッカーが貼られており、だいぶ喚起されてるなと思いました。まぁ、トカラまで行く人にこの辺の意識がないとは思えないので心配はしていませんが一応。

デルモゲニー Dermogenys collettei

デルモゲニー

Dermogenys collettei

Dermogenys collettei

 東南アジアの河川中下流では小型の淡水サヨリ類がよく見られます。熱帯魚をやっている方ならゴールデンデルモゲニーなんかは馴染み深いと思います。サヨリは水面付近を泳ぐため、濁った川でも見つけやすく、その川に小魚がいるかどうかを簡単に見分けられる指標とも言えるでしょう。この魚がいれば他にもバルブなりラスボラなりグラミーなりがいる可能性があります。今回覗いた川では他にバルブやベタっぽい魚が泳いでいるのが見えました。サヨリは好きな魚上位にいるので、東南アジアで毎回見るたびに嬉しい気持ちにしてくれます。

Coenobita lila ウスムラサキオカヤドカリ

ウスムラサキオカヤドカリ

Coenobita lila

ウスムラサキオカヤドカリ Coenobita lila

ウスムラサキオカヤドカリ Coenobita lila

 本種は2016年記載という現時点でオカヤドカリ科唯一の2000年代記載種です。マレー半島南部と周辺離島(マレーシア南部離島〜シンガポール〜バタム島等のインドネシア離島)に限られて確認されています。記載論文にはオカヤドカリ Coenobita cavipesの隠蔽種とされてきたとありますが、実際のところIndonesian blueberry land hermit crab(インドネシアのムラサキオカヤドカリ)と呼ばれていた通り色味が全然違います。日本のムラサキオカヤドカリとは地理的に隔離されているため別種との認識はされていましたが、一部では混同されていたため混乱を招いていたようです。これもまた現地に行かねば見れませんので、ようやく2022年7月より一部地域で渡航規制が緩和されたということで、コロナ禍海外渡航に踏み切りました。

 昼間は思いっきり観光を楽しみつつ、暗くなってから探しに出かけたところ、目星をつけていたポイントが夜間立ち入り禁止となっていました。それも2ヶ所も。この2ヶ所どっちかでは見つかるだろうとタカを括っていたので少し焦りました。行ける範囲をある程度歩き回ったのですが気配なし。覚悟を決めて道なき海岸林に突撃して滝汗をかいていると、後ろに気配を感じました。ライトを照らして浮かび上がったその姿に生唾を飲む。いた。

Coenobita lila

ウスムラサキオカヤドカリ Coenobita lila

 本種の種小名はライラック色からであり、その名のとおり成体は明るい紫色をしています。本当に美しい。この紫色は日本のムラサキオカヤドカリでも稀に体の一部に呈している個体はいますが、他の色とのマーブル具合にやはり差異が出ますし、デフォで全身がこの色に成長するというのはこの種ならでは。この辺の色味の話はオカヤドカリ類を多数見てきた方なら、あ〜、わかるわかるとなってくれるかなと笑。ここは海外ですので天然記念物とか関係なし。しっかり触って隅々まで観察。好きに撮影。実に6年ぶりの初見オカヤドカリ種の観察に心躍りました。この感覚、実に海外遠征らしい楽しさです。来てよかった。広義の太平洋のオカヤドカリ種コンプまであと3ヶ国。