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オオテナガエビのグアム-ミクロネシア-からの初記録

オオテナガエビのグアム-ミクロネシア-からの初記録

Fuke, F. and Sasazuka, M. 2021. First record of Macrobrachium grandimanus (Randall, 1840) (Crustacea, Decapoda, Palaemonidae) from Guam, Micronesia. Check List 17(3):759-763.

First record of Macrobrachium grandimanus (Randall, 1840) (Crustacea, Decapoda, Palaemonidae) from Guam, Micronesia リンク

オオテナガエビ

  オオテナガエビ Macrobrachium grandimanus (Randall, 1840) は汽水性のテナガエビで、左右非対称な第二胸脚(鉗脚)が特徴です。分布がハワイ等ポリネシアエリアと沖縄等南西諸島エリアに分断されており、この2集団は遺伝子解析からも分化が起きているとされています(タイプロカリティがハワイですので、南西諸島エリアの集団が隠蔽種)。

 2018年秋のグアム遠征でCaridina variabilisを探していた際に、ついでにシオマネキ類を探そうと河口に寄ったところエビの姿が見えました。網を入れてみたらなんとオオテナガエビが。グアムでは記録がないどころか、分布の分断された空白エリアであるミクロネシアエリアで見つかったわけです。さてさてとサンプル数確保のためうろうろしていたら、遊びに来ていた現地の少年クリストファー(当時12歳)に声をかけられました。このグアム遠征はソロだったので、外国人が綺麗でもない河口で一人金魚網持ってチョロついてたらそりゃ気になりますね。何してるの?とかどこから来たの?とか色々訊かれつつ拙い英語で話してると、こっちにもいるよとエビ探しを手伝ってくれました。謝辞入れたかったけど、連絡もとれないですしファーストネームしかわからないし残念。

オオテナガエビ

 そしてテナガエビといえば知り合いにがいるので遺伝子解析、執筆等相談して論文を書こうとなりました。ありがたい。結果としてグアムのオオテナガエビは南西諸島の集団と近いことがわかったので、隠蔽種側です。西太平洋における両側回遊性種の分布拡散にかかる重要な論文になると思います。これ結構面白い結果で、個人的にはフィリピンから流れてきているのではないかなと思っています。南西諸島の生物がグアムに流れ着いていると言うよりは、グアムの生物が小笠原諸島に流れ着いている方向ですので、フィリピン辺りの集団が南西諸島とミクロネシアに分かれて流れてきていると思います。つまりフィリピンからはオオテナガエビの記録は確かないんですが、隠蔽種クレードがいると個人的に考察しています。まだまだこの辺興味が尽きないのでまたそのうちグアムに行って色々やりたいです。

 

他のグアム論文はこちら。

ones-habitat.hatenablog.com

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