One's habitat Blog

ホームページ「One's habitat」の付属ブログ。何屋かと訊かれたらオカヤドカリの人です。無断転載ダメ。

Coenobita lila ウスムラサキオカヤドカリ

ウスムラサキオカヤドカリ

Coenobita lila

ウスムラサキオカヤドカリ Coenobita lila

ウスムラサキオカヤドカリ Coenobita lila

 本種は2016年記載という現時点でオカヤドカリ科唯一の2000年代記載種です。マレー半島南部と周辺離島(マレーシア南部離島〜シンガポール〜バタム島等のインドネシア離島)に限られて確認されています。記載論文にはオカヤドカリ Coenobita cavipesの隠蔽種とされてきたとありますが、実際のところIndonesian blueberry land hermit crab(インドネシアのムラサキオカヤドカリ)と呼ばれていた通り色味が全然違います。日本のムラサキオカヤドカリとは地理的に隔離されているため別種との認識はされていましたが、一部では混同されていたため混乱を招いていたようです。これもまた現地に行かねば見れませんので、ようやく2022年7月より一部地域で渡航規制が緩和されたということで、コロナ禍海外渡航に踏み切りました。

 昼間は思いっきり観光を楽しみつつ、暗くなってから探しに出かけたところ、目星をつけていたポイントが夜間立ち入り禁止となっていました。それも2ヶ所も。この2ヶ所どっちかでは見つかるだろうとタカを括っていたので少し焦りました。行ける範囲をある程度歩き回ったのですが気配なし。覚悟を決めて道なき海岸林に突撃して滝汗をかいていると、後ろに気配を感じました。ライトを照らして浮かび上がったその姿に生唾を飲む。いた。

Coenobita lila

ウスムラサキオカヤドカリ Coenobita lila

 本種の種小名はライラック色からであり、その名のとおり成体は明るい紫色をしています。本当に美しい。この紫色は日本のムラサキオカヤドカリでも稀に体の一部に呈している個体はいますが、他の色とのマーブル具合にやはり差異が出ますし、デフォで全身がこの色に成長するというのはこの種ならでは。この辺の色味の話はオカヤドカリ類を多数見てきた方なら、あ〜、わかるわかるとなってくれるかなと笑。ここは海外ですので天然記念物とか関係なし。しっかり触って隅々まで観察。好きに撮影。実に6年ぶりの初見オカヤドカリ種の観察に心躍りました。この感覚、実に海外遠征らしい楽しさです。来てよかった。広義の太平洋のオカヤドカリ種コンプまであと3ヶ国。