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大東諸島南大東島におけるオカヤドカリ科 Coenobitidae の観察報告

大東諸島南大東島におけるオカヤドカリ科 Coenobitidae の観察報告

笹塚諒, 2024. オカヤドカリ: Land Hermit Crab in Pacific Rim. ジェイズ・エンタープライズ, 東京. 82pp.

ISBN978-4-600-01494-0

oneshabitat.theshop.jp

www.ones-habitat.com

 本書にて、標記の短報を掲載しております。これは大東諸島におけるオカヤドカリ科の種構成を踏まえた最初の分布報告となります。

 大東諸島沖縄本島から約400 km 東方に位置する隆起環礁の諸島で、これまでオカヤドカリ科 Coenobitidae の分布調査は実施されておりませんでした。先行研究の観点でいうと、花の蜜摂食報告が南大東島の個体によるものですので、オカヤドカリ科の生息自体は記録されています。しかし、写真を見るに当歳個体であり、種の同定は論文からは不可能です。加えて、個体群の規模も推定できません。

南大東島 オカヤドカリ

南大東島の断崖

 大東諸島の緯度経度や海流の流程を踏まえると、オカヤドカリ科が複数種分布することは容易に想像がつきます。しかし、まとまった記録がないこと、そしてこの諸島で記録を出すことが重要であると判断できる根拠は地理にあります。大東諸島の沿岸は断崖により成っており、大東石灰岩を基盤とした岩石地帯によって取り囲まれています。小難しく書いていますが、つまりは島にビーチを有する波打ち際がなく、険しい崖や岩場しかないということです。オカヤドカリ科は幼生期を海で過ごすため、幼生の放出と幼生の上陸は波打ち際で行われます。この海と陸の境目が、波の荒ぶる崖や岩しかないとなると、生活史を回すことが他の島と比較して困難であると推測できます。立地に対してまとまった観察記録が出ていないのは、そもそも個体数が少ないためだと推測できますし、こういった特殊な島嶼における生息記録は自然史解明において重要なデータになると考えられます。

 というわけで、2021年10月に南大東島へ遊びに…いえ1人で調査に行きました。結構難航しましたが、オカヤドカリ科4種を確認できたため記録として残した内容になっております。ちゃんとISBNを取得した書籍であるので、素人の雑記ではなく短報としての体裁は担保してます。安心して引用ください笑。

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