マレーテナガコガネ
Cheirotonus peracanus
テナガコガネ類は東アジアからインド亜大陸にかけての熱帯亜熱帯に広く分布する大型の甲虫で、日本においても沖縄本島に1種が極めて小さな個体群として分布しています。大木の雨露に貯まったフレークで幼虫が育つため、古く深い原生林が必要という要求する環境が現代においてシビアな虫です。
マレー半島の高地においてはマレーテナガコガネが生息し、避暑地として賑わう街の灯火に飛来することが知られています。なお、最近では街の開発による環境の改変や灯火のLED化によって見る機会が減っているのが現状です。
この虫については、かねてよりずっと見たいと思いながらマレー半島を訪れていたのですが、なかなか巡り合うことができずにいました。過去に破片を見つけてとてもとても悔しかった時は、生体を見れていないのに記事にしているほどです。
今回は3度目の渡航にしてようやくその姿を拝むことができました。テナガコガネ類のその特徴的な腕はオスに発現するため、メスだったらまた悔しさを積もらせていたのですが、運の良いことにオスと巡り合うことができました。
長く刺々しい凶悪な前肢、ピンクブロンズに煌めく前胸、ヒエログリフが刻まれているような鞘翅、そして掌からはみ出る大きさ。それが熱帯雨林の大木を闊歩する姿は想像の何倍も格好良すぎて、本当に感動しました。これは良い…いや、良すぎる虫ですよ。