トカラハブ
Protobothrops tokarensis
トカラハブはトカラ列島南部の宝島、小宝島にのみ生息する日本北限のハブです。トカラ列島は奄美大島の北に位置し、鹿児島本土または奄美大島の港からフェリーでしか上陸できません。このフェリーは悪天候による欠航率が高いうえに、鹿児島本土の港からは宝島まで片道13時間かかります。奄美大島からは近いのですが、奄美まで行ってフェリーが欠航して行けませんなんてことも往々にしてあります。計画が欠航で頓挫した時はせっかく用意した時間的にも金銭的にもダメージが大きいのは言うまでもなく、なかなか足が伸びないというのが多くの意見です。とはいえ、個人的には同じくらい行きにくい島嶼である小笠原諸島に比べると魅力的な爬虫類がいるので、まだトカラは遠征してる人がいるなという印象です。学生なら奄美大島と重ねて長期遠征をするという時間に物言わせた魅力的なプランもありますし。今回は九州住みという利点を活用して午前中は仕事をしつつ、出航が決まる当日に新幹線を予約して行ってきました。帰りは記録的短時間大雨に掴まり途中停泊して遅延しましたが、終電ダッシュで間に合いました。やはりリスキーな遠征です。
トカラ列島は深い海峡(トカラ海峡)で区切られており、その境界線は生物地理学的には渡瀬線と呼ばれています。ここが本土の生物と琉球の生物の分布の境目となっており、宝島はギリ琉球側にあります。しかし、奄美群島とはまた一味違う生物が生息し、爬虫類で言えば有名なものにこのトカラハブがいます。本種は最大全長1m程度の小型種で、色彩の個体差が大きく白黒の2タイプに分けられてます。
白トカラハブ(トカラハブ淡色型)
淡いクリーム色の個体。大体8割がこのタイプになります。夜に林道を歩いていたらぽとぽとと落ちていました。海浜植物群落にもいたので、オカヤドカリ類探しでも注意しなきゃいけないですね。
黒トカラハブ(トカラハブ暗色型)
昼間に海岸沿いの洞窟にアンキアラインを求めて入ったところ遭遇しました。昼間はこういうところで涼んでたりするんでしょう。黒い身体に輝くクサリヘビのこの鋭い眼。格好良すぎますこれ。
滞在時間17時間とはいえ、無事2タイプ見れて良かったです。他にも中間型の茶色い個体とか、金色の個体とかいるらしいですが、そこまでは見れませんでしたね。本種は言うまでもなく有毒種です。強毒ではなく、分布もこの通りなため血清が作られておらず、咬まれたら対処療法で寝込むしかないです。あまり薮には入らない方が賢明ですね。洞窟に入った時は足元に白個体がいて、踏み場を間違えてたら危なかったなという場面もありました。村内も至る所に「吐噶喇ハブ🐍注意」のステッカーが貼られており、だいぶ喚起されてるなと思いました。まぁ、トカラまで行く人にこの辺の意識がないとは思えないので心配はしていませんが一応。