One's habitat Blog

ホームページ「One's habitat」の付属ブログ。何屋かと訊かれたらオカヤドカリの人です。無断転載ダメ。

キンランハエトリグモ Irura bidenticulata 繁殖

キンランハエトリグモ(金襴)

Irura bidenticulata

 突然ですが、私は紫色と金色が好きです。かなり好きです。アクセサリーや小物類あたりは基本このカラーを用いてたりもします。となると、生き物趣味においてもそういったカラーリングを求めますし、オカヤドカリ類には琴線に触れる紫色をした種が複数いるというのも、この分類群にのめり込んでいる理由の一つでもあります。

 一方で、悲しいことに美しい紫色の生き物がとても少ないことはご認識の通りだと思います。さらに、紫色と金色のバイカラーな生き物となるとほぼいないに等しい…。そんな中、遡ること10年前(2014年)。SNSでとある投稿が目につきました。タイのサラブリー県でキラキラのハエトリグモ Simaetha sp. が見つかったという内容です。その写真を見て目ん玉が飛び出ました。なんと、好みド直球なメタリックパープルとゴールドのバイカラーをしていたのです。正にこれぞ探し求めていたカラーリングの生き物。とはいえ、流通に乗るかはわからなさすぎる…。タイに行くことも考えましたが、クモなんて専門外すぎるので見つけられる気もしない(そもそも顔につく蜘蛛の巣や、細長い脚で縦横無尽に身体を這い上がってくる蜘蛛は幼い頃からかなり苦手な部類で、ハエトリグモはその要素がないため好きでも嫌いでもなかった)。とりあえず入荷を待つことにしていたのですが、何年もその気配すらなく…。時折思い出したように調べていると、情報が増えてきてタイから中国にかけて広く分布することがわかってきました。これは入荷るかも、と期待をしていたのですが、なぜか不思議なくらい日本に来ず…。その理由は念願の叶って手に入れたことで理解しました。

Irura bidenticulata

キンランハエトリグモ 幼体

 というわけで、念願のキンランハエトリグモを入手したので飼育に挑戦です。言うまでもなく蜘蛛の飼育は初。しっかり繁殖を目指す方針で始めました。手にして最初の感想は、、、めちゃくちゃ小さいじゃないか‥。でした。聞いてはいたし、まだ成体じゃないというのもありますが、それにしてもめちゃくちゃ小さい。成体でも5mmくらいです。こういう小さい肉食の奇蟲は入れても見向きされないことが殆どだから、話があっても卸さないんだそうです。なるほどなぁ。しかも幼体は多少キラキラしているものの、紫色の発色が弱いため絶妙に目を引かないですね。2023年にヤフオク!とかイベントとかに幼体が出てたりもしてたみたいですが、注目はされてないように感じました。

 手に入れた幼体は3匹。まだ何回か脱皮を残しているようだったので、しっかり育成しました。2回ほど脱皮をして成体になったその姿は、あの憧れの美しさそのもので本当に感動。特にオスは紫色の面積が広く、本当に美しいです。極めて素晴らしい。まぁ、小さいんですがね。

Irura bidenticulata

キンランハエトリグモ 成体オス

 しばらくして、3匹とも成体になって性別が判明。オス1メス2のトリオでした。どのくらいで成熟するかもわからなかったので、程よいタイミングでオスメスを会わせてみました。片方はすんなり受け入れ、もう片方は酷く逃げ惑ったので相性ありそうです。交接したメスは隠れ家の多い環境を用意してそこでキープ。荒らすのもアレですので卵を産んでるかもわからないまま放置してると、諦めかけた4ヶ月後に稚蜘蛛が湧いていることに気付きました。

Irura bidenticulata

キンランハエトリグモ 交接

Irura bidenticulata

キンランハエトリグモ 卵嚢

 CBとれました。初めての蜘蛛飼育で、日本で繁殖の前例がない種(まぁ、サイズさえ気を付ければ難しくはないだろうとは言われてましたが)。なかなかに気持ちいいですね。私が注目するといらん相乗りをしてくる人が少なからずいるので悩みましたが、採って出しする人とは熱量が違うのでまぁ良いかなとは。

Irura bidenticulata

キンランハエトリグモ 孵化直後幼体

Coleonyx fasciatus セキヨウトカゲモドキ

セキヨウトカゲモドキ(夕陽蜥蜴擬)

Coleonyx fasciatus

Coleonyx fasciatus

 アメリトカゲモドキ Coleonyx 属を現地観察する。トカゲモドキフィールドワークとして、国産ゴニの2ステップほど高次難易度な目的を達成してきました。とはいえ、種によっては行けば必ず見れるよと言われているもの(お察しのとおりバンドトカゲモドキ)もいる中で、今回見てきたのは幻の一角であるColeonyx fasciatus。流通も無く、現地観察してる人もあまりいない本種は、トカゲモドキと言えども日本ではほぼ認知されていないのが実情でした。Gecko Essence 掲載種の目玉だったのですが、極一部のトカゲモドキ好き以外はなんか盛り上がってるけど何ソレ(こそこそ検索)状態。まぁ、仕方ないんですけどね。

 本種の特徴を一言で示すなら、ゴニのネオテニー。成体でも白黒の明瞭な縞模様に暖色の頭部を呈し、全体的に透明感を纏っています。こんなにも素晴らしいトカゲモドキがいるんですよ。ずっっっっと見たかったので、メキシコはシナロア州まで行ってきました。4晩必死に乾燥林を這い回り、見つけられたのは1匹のみ。本当に珍しいです。

ホンコンコブイモリ

ホンコンコブイモリ

Paramesotriton hongkongensis

ホンコンコブイモリ

 台風14号(子犬)が最接近している2023年10月第一週末に香港へ行ってきました。目的はこのホンコンコブイモリととある蟲。台風の土砂降りの中、意地張ってフィールドへ突撃して目的を達成してきました。小川が少し堰き止められて水草も繁茂する水流緩やかな環境で、複数個体が適当に活動していた感じです。来れば見れると言われていた対象ですが、台風で増水し濁っている状態で水物を探すのは流石に苦労しました。あと普通に雨に濡れ続けてツラかった。何とか見つけたポイントでギリギリ見れて良かったです。海外でイモリ類を見つけることができたのはコレが初。マレー半島・ボルネオでアシナシイモリは見れず、カナダでもサメハダイモリは見れずで連敗な中、可能性が高かった香港も台風激突とは、、、とちょっと焦りました。海外有尾フィールドとは噛み合わせ悪いのかなとも感じますね。

 ホンコンコブイモリは九龍半島から香港島にかけて(いわゆる香港)と広東省の一部に分布する種です。全体的に地味ですが、全長15cmほどにも成長し、ゴツゴツとした体格と派手な腹面を持つことで少なからずの人気があります。10年前とかはたくさん入荷していましたが、現地で保護種に指定され、加えてCITESⅢ→Ⅱにも指定されたことで完全に流通は途絶えました。細々と国内CBが動いているくらいですね。ということで現地に行くか、と見てきた流れです。

ヤモリ雑誌 Gecko Essence 販売→完売

ヤモリ雑誌  〈Gecko Essence〉 ★完売 250部★

Bamboo's Gecko のAyumu氏とヤモリのそれぞれ得意な部分に焦点を絞った雑誌を合作しました。Ayumu氏からは"ブリード"の観点より7種、私からも"フィールド"の観点より7種、計14種をまとめた内容になります。販売は10月1日(日)とんぶり市2023・11月5日(日)ぶりくら市2023です。正誤表は本記事最下に記載しております。

価格:¥1,000.-

構成:B5 フルカラー P43

販売①:とんぶり市2023  7階

・Blue Gecko lab.様{販売者:Ayumu氏}
・Artifact × Miyabi Nature Photography様{販売者:One's habitat

販売②:ぶりくら市2023 1階

・Artifact × Miyabi Nature Photography様{販売者:Ayumu氏}52,53番

※増刷なし売切りです。ブースマップは以下のぶりくら公式サイトからご確認ください。

burikura.com

 私担当後半フィールドの部ラインナップとしては、日本の壁ちょろヤモリの中でもなかなか現地観察できない種を選びました。そして環太平洋のトカゲモドキ科であるGoniurosaurus属、Aeluroscalabotes属、Coleonyx属を各属1種は現地観察するという裏テーマも織り込んでいます。

・ニシヤモリ Gekko sp.

 九州西部にのみ分布する重厚な未記載種。本土に分布しているものの、その特殊な生息環境からなかなか観察が難しいヤモリです。

・タカラヤモリ Gekko shibatai

 船でしか行けないトカラ列島の宝島 (と小島) でのみ確認されているというこれまた極端な分布のヤモリ。国産 Gekko では一番人気。

・オビトカゲモドキ Goniurosaurus splendens

 言わずと知れた徳之島のキョクトウトカゲモドキ。国産ゴニの中では行きにくさ、見つけにくさ踏まえて中難易度なイメージですが、個人的に一番好みということでチョイス。

・大東個体群オガサワラヤモリ Lepidodactylus lugubris "Clone B"

 大東諸島は南西諸島でも東の外れにある秘境。そこにいるオガサワラヤモリの貴重な在来個体群に迫ります。

・ボルネオキャットゲッコー Aeluroscalabotes felinus multituberculatus

 東南アジアでも赤道付近の一部地域には半樹上性なトカゲモドキであるキャットゲッコーが生息。ボルネオ亜種をジャングルで探しました。

・バイノトリノツメヤモリ Heteronotia binoei

 オーストラリア大陸で、それ知ってる、な両生類爬虫類を見てきました。

・セキヨウトカゲモドキ Coleonyx fasciatus

 独特かつ美麗でありながら、治安と珍しさを理由に表舞台へ出ていないコレオニクスを現地で探すという紀行ならぬ奇行文。

 前半部担当のBamboo's Gecko記事は以下リンクからどうぞ。Ayumu氏の掲載種は全てF2の繁殖実績ありという圧巻のラインナップ。飼育情報の奔流と、その実力を形造る拘りが伝わる素晴らしい内容です。

donky141.blog.fc2.com

 本当に自画自賛になりますけど、このレベルの内容の同人雑誌なんてなかなか世に出ないですよ。なお、ハウツーではなく、エッセンスです。客観的なデータの羅列ではなく(それももちろんありますが)、それぞれが気にしていること、やってみて感じたことなどを写真と共に諸々書いてます。

 我々は本業を別に持ち、少しばかりの時間を使ってやっている趣味の領域です。そりゃあショップ/ブリーダーや研究者といった、この分野を生業にしてる方々と比べると色んなものが圧倒的に少ないという現状。それでも、趣味でもこんな成果が出せて、こんな風に形にすることができるんですよというメッセージも伝われば嬉しく思います。

何はともあれ、ぜひお手に取っていただければ!損はしないはず!とんぶりでも大変好評いただけました!

 

★正誤表★  …すみません

・P4上から6行目:「やや軽めの紫外線」→「やや弱めの紫外線」

・P5下から3行目 :「なるべきものを排し」→「なるべくものを排し」

・P8上から2行目 「一長一短」→「一朝一夕」

・P8上から7行目:「脱脂面に毛細管現象で上がってきた」→「脱脂綿の毛細管現象で上がってきた」

・P9下から1行目:「場合によっては50mm」→「場合によっては5mm」

・P12上から5行目:「ヒルヤモリの仲間は排他性が高い種が、」→「ヒルヤモリの仲間は排他性が高いが、」

・P14下から7行目:「霧吹きしてを行い、」→「霧吹きを行い、」

・P16上から24行目:「発情・放卵までは」→「発情・抱卵までは」

・P18下から2行目:「代謝を上げてつつ、」→「代謝を上げつつ、」

・P20上から5行目:「体を冷やせるようにことも意識すると」→「体を冷やせるように意識すると」

・P42上から1行目:「ハッコクトカゲモドキ」→「セキヨウトカゲモドキ

・P43上から4行目:「私の興自然と」→「私の興味は自然と」

・P43上から10行目:「飼育ブログに」→「飼育ブログの」

Coenobita compressus ハクボオカヤドカリ

ハクボオカヤドカリ

Coenobita compressus

Coenobita compressus

 日本から太平洋を挟んだ向こう側であるアメリカ大陸西岸にもオカヤドカリ属は生息しています。しかし、太平洋西部と違い多様性が低く、メキシコからペルーにかけての広い分布域を持つ1種のみがいるだけです。

 そんな太平洋の彼方のオカヤドカリ種であるハクボオカヤドカリCoenobita compressus を探しに、メキシコはシナロア州へ行ってきました。本種の分布域では生き物屋にとってコスタリカが一大人気国ですが、ここはもう一つの目的と合わせてメキシコをチョイス。3年半前のバンクーバー振りの長旅です。トランジット込みで18時間のフライト。移動で身体を酷使しながらも、現地に着いたその日の夜に砂浜を10km程歩いて探したところ、たくさん現れてくれました。

 本種を見れたことで、太平洋に分布するオカヤドカリ科13種(不明種C. olivieriを除く)の全てを現地撮影することができました。と、自分で書いてても良くやり遂げたなと思いますね。

 太平洋に関するオカヤドカリの本を自主制作しました。以下のリンク先で販売していますので、ぜひご検討ください。

oneshabitat.theshop.jp

オカヤドカリ

ナキオカヤドカリ

ムラサキオカヤドカリ

オオナキオカヤドカリ

コムラサキオカヤドカリ

サキシマオカヤドカリ

オオトゲオカヤドカリ

ヤシガニ

アカツキオカヤドカリ

フシグロオカヤドカリ

ウスムラサキオカヤドカリ

レンガオカヤドカリ

ハクボオカヤドカリ

静岡県伊東市のアムールハリネズミ

 日本には数多の外来種が蔓延っており、調べてみればこんなものまで?となるような種もいます。今回探してきたのはアムールハリネズミ Erinaceus amurensis。日本では静岡県伊東市や神奈川県小田原市などで確認されている特定外来生物です。30年前くらいから目撃情報と定着が示されており、珍奇外来生物としては有名な方です(生き物好きの中では常識の部類)。えっ!?じゃあペットで売られてるのは!?野生でいるなら捕まえて飼いたい!みたいな感想を持ったのであれば、ちゃんと調べてみてくださいね。

アムールハリネズミ静岡県伊東市

  データ:2023年6月17日 20:45 静岡県伊東市

 遠目だとモグラ塚が非常に紛らわしかったです。近付いてちゃんと確認しないとわかりません。これでアムールハリネズミモグラ塚擬態であるとわかりましたね。はい。ちなみに、2人で1時間探して1匹ですので、そんなに個体数は多くはないのかなという感じです。防除も行われているようで、そこらにコロコロ落ちてる感じではないとわかりました。

野生のハリネズミ

少し警戒を解いてきて顔が見え始めている様子

 刺激されると完全に顔も覆って丸くなるので全面トゲトゲの肉塊になります。そして転がすともにょもにょ動きます。もにょもにょ動くトゲトゲした柔らかい塊です。変な生き物ですよこれ。

アミナゲグモ属の一種 Menneus

アミナゲグモ属の一種 Menneus

メダマグモ

アミナゲグモ Menneus

 オーストラリア ケアンズ熱帯雨林で、とある蟲を偶然見つけました。投網する蜘蛛として有名なメダマグモの仲間です。小さな網を構えて待ち伏せし、目の前を通る虫に覆い被せて捕獲します。そんな特殊な行動をとるのでわりと有名ですね。あまりこの類いに明るくない自分でも知っていたので、夜の熱帯雨林にて青白く浮かぶ小さな網を見た時はおぉっ!となりました。ちなみに今回見れたのは目玉が大きくない分類群であるアミナゲグモの方です。どちらにしてもメダマグモ類は日本に分布していないので、海外遠征しないと見れない奇蟲という良さがあります。