One's habitat Blog

ホームページ「One's habitat」の付属ブログ。何屋かと訊かれたらオカヤドカリの人です。無断転載ダメ。

ツシマカブリモドキ

ツシマカブリモドキ

Damaster fruhstorferi

ツシマカブリモドキ

 ツシマカブリモドキは日本に分布する唯一のカブリモドキ類で、対馬が大陸の生態系を色濃く残していることを示す生物種の1つです。その立ち位置、そして非常に美しい構造色は言うまでもなく人気の要素で、対馬遠征をする虫屋の目的の一つとして必ず挙がる種だと思います。採集方法は例に漏れずベイトトラップが有効ですが、そんな面倒なことをせずにルッキングで見つけたいと思うのは考えが甘いのでしょうか。

ツシマカブリモドキ

 アカマダラを探しつつ林道の側溝を覗いていると、大きめの虫がそこそこの速さで歩いているのが見えました。ライトに反射してキラリと光るエリトラの縁で、探していたものだと判明。刺激を与えると臭い汁を出すため、すぐ掴みたい気持ちを抑え、触れずにケースへ移しました。ヘビとかもそうなんですけど、防御の臭い汁が手につくとなかなか臭いが取れなくてテンション下がるんですよね。手間でも回避できるものは回避するに限ります。しかし、角度によって金色〜黄緑色〜赤色に変化する美しい構造色は感動ものです。南西諸島とは一味違う、対馬でしか見れない魅力的な生物たちは一見の価値ありと本当に思います。

渡嘉敷島ハイ

渡嘉敷島ハイ

Sinomicrurus boettgeri

渡嘉敷島ハイ

 ハイは沖縄諸島に分布する鮮やかなオレンジ色と黒色を持つ美しいコブラ科のヘビです。これまでヒャンの亜種とされていましたが、2021年末の論文で独立種として述べられました。この論文では徳之島のハイはヒャンに含まれるとされたため、これまでは「ハイは徳之島でだけだけど見たことがある。」と言えたのに、未見種となってしまったのです。そんな本種を2022年春先の渡嘉敷島遠征で見つけることができました。

 渡嘉敷島は控えめな面積と両爬の特産種がケラマトカゲモドキくらいという点から、遠征しても1〜2泊程度かつ単発で満足しやすい島であると言えます。それゆえハイのようなレア種は目撃例が少ないようで、渡嘉敷島個体群は写真があまり見当たりません。まぁ残念ながらクメハイと違い、沖縄本島の個体群と変わりないというのは上添の写真をご覧になれば察するところと思いますが、、、。

ハワイハネナシクワガタ 標本

ハワイハネナシクワガタ

Apterocyclus honoluluensis

ハワイハネナシクワガタ

 Hawaiiは北半球太平洋のど真ん中に位置する海洋島で、その地理的に隔絶された環境には貴重で興味深い生物が多数生息しています。ハワイハネナシクワガタはハワイ固有のクワガタ種群であり5種分類されていますが、外来ネズミによる捕食圧でその数を減らしいくつかは絶滅したと言われています。もともと発見数が少なく謎の多いクワガタでしたが、謎を残したまま数種は滅んでしまったと言う訳です。その中でもホノルルエンシスはカウアイ島に広く分布していることから、少数ながら継続して発見されており偶に標本が出回ります。ちなみにホノルルのあるオアフ島には分布していないそうです。

 海洋島生物好きとして前々から欲しい欲しいと思っていたのですが、上述内容でお察しの通りなかなか売られていることが少なくかつ高価であり手に入れることが出来ずにいました。そんな中2021年末に売られているのを見かけたので、2cmもない黒い虫の死骸にしてはやはり高いと思いつつも思い切って買ってみました。手元に届いて初めて現物を見て呟いたのは素晴らしいの一言。コロコロとした曲線の顕著な姿はこれまで見たクワガタのどれとも異質ですが、これぞ海洋島の神秘といったところですね。満足度の高すぎる買い物でした。貴重なものに需要を発生させるというのはあまり良くないこととは思いますが、購入はこの1個体に限り、一生涯の宝物にする所存です。

オガサワラヤモリ クローンB 大東諸島

オガサワラヤモリ クローンB 大東諸島

Lepidodactylus lugubris "Clone-B"

オガサワラヤモリ大東

 オガサワラヤモリは単為生殖種ですが、クローンタイプによる遺伝的多様性を秘めた可愛いヤモリです。一般的に知られているのは日本の南西諸島で広く見られるクローンC or Aですが、その2タイプから外れた模様を持っているのがクローンBになります。上の写真のとおり、大きな黒点模様を持っているためダルメシアンのような格好良さがあります。言うまでもなくこのクローンBは見たいヤモリの一種でした。見たいと思いつつもなかなか見に行けていなかった理由。それは日本での分布が大東諸島に限られている(一部報告例あり)ためです。

南大東島

南大東島

 大東諸島沖縄本島から約360km東方の海洋島で、飛行機の便は少なく、フェリーも波で欠航しやすい絶妙に行きにくい島嶼です。しかも、大東諸島はオガサワラヤモリ以外の両生爬虫類が全て移入種で、虫や海の生き物にも興味を持っていないと更に遠征候補先から外れること必至でしょう。そんな大東諸島南大東島に2021年の秋頃に一人で赴き、オガサワラヤモリを探してきました。

 遠征記については、クリーパー93号南大東島フィールドレポートとして寄稿しております。ご興味のある方は是非購読してみてください。

幼体

 オガサワラヤモリ クローンBはずっと見たかったヤモリでしたので、1個体目を見つけた時は久しぶりに国産ヤモリでテンションかなり上がりましたよ。

太平洋西部の島々で観察したオガサワラヤモリをまとめているページは以下リンクからメインサイトへ。

www.ones-habitat.com

ケラマトカゲモドキ

ケラマトカゲモドキ

Goniurosaurus kuroiwae sengokui

ケラマトカゲモドキ

 慶良間諸島の一部(渡嘉敷島阿嘉島)に固有のクロイワトカゲモドキ亜種:ケラマトカゲモドキ。本亜種は赤眼とマッチしたオレンジの体色が特徴で、国産ゴニではケラマが一番好きという声も多い種です。航空券が高騰する連休に島へ行くなら、下手に飛行機を乗り継ぐよりチャチャっと本島から船で行ける島へ行った方が安くて混雑もなく楽しめるのではないかと思い、渡嘉敷島へ初上陸してきました。渡嘉敷島は生き物が見やすいと言われていたとおり、苦労することなくケラマトカゲモドキがポロポロと姿を現してくれました。

Goniurosaurus kuroiwae sengokui

 比較的オレンジ色の濃い個体。色味には個体差が大きいようで、ピンクに近い個体も普通に見られます。それと、渡嘉敷島の山中は蚊が多いのか、よく刺されているのを見かけました。蛇とかはその辺寄せ付けないでしょうが、ヤモリは硬い鱗で防御されていないので格好の餌食ですね。人からしたら小さな蚊も、ヤモリにはたまったもんじゃないですよね。

ケラマトカゲモドキ

 幼体は色味が濃いです。可愛い、というよりは小さな時から凛々しい格好良さ。抱卵したメス個体(1枚目の写真)も、ハッチして数週間という幼体も見られたので満足です。

 

English site is under link.↓

www.ones-habitat.com

ウンゼンルリクワガタ

ウンゼンルリクワガタ

Platycerus delicatulus unzendakensis

ウンゼンルリクワガタ

 ウンゼンルリクワガタは長崎県雲仙岳と長崎佐賀の多良岳に分布するルリクワガタ亜種で、九州西部の特産種です。寸詰まり傾向の形態、青みの強さ等から亜種に分類されていますが、分類するほどではないとの意見もあるらしいです。打って変わって雲仙岳多良岳でさえ分化しているとの意見もあるそうですが、ニワカ虫屋としては何もわかりません。本種は長崎に引っ越してから気にかけていた種で、コツを教えてもらって探してきました。

ウンゼンルリクワガタ 産卵マーク

ウンゼンルリクワガタ 産卵マーク

 ルリクワガタ類は産卵の際に特徴的なマークを材に遺します。それが写真の通り(・)です。これを生息地の生息標高である1000m程度の急斜面で倒木や立ち枯れを見て回り、材の表面を削る、といった採集方法です。こういうの初めてだったんで見つけるまでに2022年春先3週連続で週末に山へ通いました。初回は階段を降りれなくなるような筋肉痛に、2回目は尻筋が僅かに筋肉痛に、3回目は右腕が筋肉痛になっています。

ウンゼンルリクワガタ

 久しぶりにハードなフィールドでしたが、なかなか刺激的で楽しかったですね。長崎での良い思い出になりました。

One's habitat 制作のグッズ販売について

One's habitat -Marketing Division-

oneshabitat.theshop.jp

One's habitat制作のグッズ販売を開始いたします。販売については、上記リンクのBASEにて行なっておりますので是非ご覧になってください。隙間産業生き物屋として刺さる方には刺さる商品を用意しております。本記事では、今回販売する商品5点について紹介したいと思います。価格や素材等はBASEに記載しております。

 

f:id:Oneshabitat:20220306191102j:plain

キャットゲッコー マウスパッド

1.キャットゲッコー マウスパッド

 マレー・ボルネオ・シルバーアイのキャットゲッコーがその特徴である妖艶な眼で見つめてくるマウスパッドです。キャットゲッコーは現在一般的に3タイプ知られており、それらの大きな特徴である眼の色がしっかりわかる高品質印刷。A5サイズですので、気持ち大きめなマウスパッドです。

 キャットゲッコー3タイプが手元に揃った時に、これらの眼を見比べられる何かがあればいいなと思い、これを作りました。マウスパッドは仕事中でも手元にあり、好きに眺められるというキャットゲッコー好きのデスクワーカーやPCを使う趣味の方にはたまらない一品になったと思います。

 

 

f:id:Oneshabitat:20220306191059j:plain

日本のオカヤドカリ 合皮コースター

2.日本のオカヤドカリ 合皮コースター

 日本で見られるオカヤドカリ科全8種が円形に並ぶフェイクレザーコースターです。ゾエア幼生とメガロパ(グラウコトエ)幼生も載った豪華なラインナップ。コーヒーブレイクや晩酌等に南の島の鮮やかなオカヤドカリ達を添えませんか。時計周りにヤシガニ、ムラサキオカヤドカリ、オオトゲオカヤドカリコムラサキオカヤドカリ、ナキオカヤドカリ 、オオナキオカヤドカリオカヤドカリ、サキシマオカヤドカリオカヤドカリのゾエア幼生、ヤシガニのメガロパ幼生。

 自費出版本の「オカヤドカリ-Land Hermit Crab in Japn-」出版から早5年。販売開始から10日で売り切れてしまったため幻となってしまい今なお、また販売して欲しいという言葉をありがたいことに時折いただいております。なかなか本の再販は重い腰が上がらないので、日本で見られるオカヤドカリ類を網羅したグッズを代わりに作ろうと思いました。というわけで、ふとした休憩で使えるコースターにしました。

 

 

f:id:Oneshabitat:20220306191056j:plain

都心のセミテネラル クリアファイル

3.都心のセミ テネラル クリアファイル

 夏の風物詩であるセミには、一晩のほんの短い時間にだけ魅せる姿があります。賑やかな成虫達が鎮まる夜、地面の穴から出てきた幼虫は木や壁を登り、羽化を始めます。幼虫の殻から抜け出て身体が固まるまでの僅かな時間に魅せる姿は淡く鮮やかで、時間を忘れるほど神秘的です。本クリアファイルは都心3区で見られるセミ6種のテネラル(羽化直後)をまとめた一品。(今回で1番の自信作)

 セミのテネラルは小さい頃から大好きで、この作品の構想は2018年に立てていました。2019年には写真も揃っていたのですが、流石に一品のみの販売はやり方が悪いと思って着手が遅れていました。なんやかんやと他に4品ほど揃えることができたので、満を辞して作成。白部分を透明にしてあるので、夜にライトで探すが如く白い紙を挟むと鮮やかに浮かび上がる仕様です。なかなか満足いく仕上がり。

 

 

f:id:Oneshabitat:20220306191053j:plain

ムカデ クリーニングクロス

4.赤脚ヨロイオオムカデ クリーニングクロス

 ムカデ類の中でも飛び抜けて異質なヨロイオオムカデ。ヤスデを専食し、ヤスデに擬態する本種は目にかかる機会が極端に少なく、最高峰とも言われています。そんなヨロイオオムカデの赤脚個体をモデルにしたクリーニングクロスです。メガネやPC画面等、繊細な物にムカデを這わせて綺麗にしませんか。

5.マレーシアンジュエル クリーニングクロス

 ムカデ随一の美麗種であるマレーシアンジュエルのクリーニングクロスです。なかなか日常生活では使いにくいモデルではありますが、黒い身体から伸びる三原色は周りの人から彼らのイメージを覆すかも。

 貴重で人気なムカデをドカンと載せた一品。特に赤脚ヨロイオオムカデは何かしら形にしたかったので、この写真は今まで隠していました。今のところ私以外には取り扱えない代物ですので、この機会に是非。

 

 

一応サイトの方でもギャラリーとしてページを作ってあります。

www.ones-habitat.com